本研究は、「平成の大合併」以前と以後の地方政治の連続性を視野に検討を試みることを目的の1つとしている。これまでの市町村合併は、地方政治の場に大きな影響をもたらしていると考えられる。市町村合併に伴い市町村議員数は減少し、また行政機関は統合された。その結果、一部の住民にとっては、政治・行政的情報を得ることが困難になっており、市町村によっては、このような行政アクセスに対する不平等が自治体内の新たな地域対立の火種になっている。今回の研究は、合併という市町村を取りまく大きな変化が、地方住民の意識にどのような影響をもたらしたのか(たとえば行政との距離感や地方議員像の変化)、これらを住民に対するサーベイ調査を実施し、そこから傾向等を見いだそうとするものである。 平成18年度は、市町村合併に関わる資料収集、住民や地方議員に対する意識調査の実施を行った。市町村合併に関わる資料は基本的に合併成功事例中心であり、新首長選挙のデータベースも十分ではない。そこで、市町村合併が不成功だった事例や合併直後の首長選挙の資料の収集も行い、分析を行った。その結果、住民に対して情報が提供されていない自治体で合併の破談がみられること、市町村合併の形態と次の市長選挙の構図の間に関連性がみられることなどの知見が得られた。また、住民に対するサーベイ調査の実施も試みた。その結果、合併直後の首長選挙では、候補者の資質や、合併過程で旧自治体間の合意事項を十分に把握しないまま投票先を判断する有権者がかなりの比率いることが明らかとなった。合併によって市町村の面積が広がったのにもかかわらず、政治・行政情報の獲得が合併以前よりも難しくなっている傾向が見受けられた。こうした傾向は、投票率の低下に結びつく可能性もあると思われる。なお、こうした知見は、同じぐ自治体合併を抱える韓国の学会で発表する機会があり、そこで報告を行った。 平成19年度では、政治・行政情報の減少と政治関心・地域の問題に対する関心についても視野に入れながら研究を進める予定である。
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