本研究課題に関する平成20年度の研究実績は以下のとおりである。 第一に、「労働契約法」(2008年1月施行)、「労働紛争調停・仲裁法」(2008年5月施行)が労使紛争の頻度や形態に及ぼしつつある影響について、新聞・雑誌・書籍による幅広い文献リサーチを行った。 第二に、新「企業所得税法」および上記2つの法律の立法過程における外資企業の意見集約・表出過程、施行にともなう影響、企業の社会的責任(CSR)へのとりくみについて、ジェトロ(日本貿易振興機構)上海センターの担当者、中国進出企業関係者に聞き取り調査を実施した。 第三に、労働者の権益保障およびCSRへのとりくみに関し、外資企業との対比を浮き彫りにすべく、陳剰勇(浙江大学教授)らのチームの協力を得て、浙江省の私営企業を対象に、アンケート調査を実施した(サンプル数252)。 上記リサーチにより、法文上工会(労働組合)の利益団体化が期待されており、外資企業(特に大手企業)および私営企業の意識にも多少の変化の兆しが見られるにもかかわらず、多くの私営企業には国際的なCSRへの取り組みは未だ見られず、現政権の「親民路線」の下、地方レベルではむしろ工会自身の行政化が進んでいる実情が明らかとなった。 リサーチ結果の一部は、次頁の書籍・雑誌のほか、『現代中国研究』第25号に公刊される予定である。
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