本研究は、グローバル化とヨーロッパ化の中、ヨーロッパで進む国民国家の構造変容のメカニズムを、近代国家の基本原則であった「領域性の再編」の観点から解明することを目指す。考察対象は、近年仏伊西で政治的課題となっている連邦制的な分権改革である。特に3力国の改革が折年対照的分岐を示している要因を明らかにすべく、従来着目された中央地方の制度だけでなく、財政調整や政党・団体など政治的リンケージまで視野を拡げている。 計画3年目は、最終成果の取りまとめ年度として、過去2年間の調査・研究作業に基づき得た知見を活かし、理論枠組と具体的分析作業を行いながら、成果公表を進めた。まず、前年の中間報告から浮上した実質的分析・理論的枠組の問題点を一段と改善するために、政治学関連、ヨーロッパ政治関連研究の消化により分析の修正を図った。具体的には、イタリアを中心に、地方制度の特徴を政策過程の動態に注目しつつまとめたり、政党政治の競合構造が政策変化との関係でどのように変容するかを考察した論文を公表したりした。また、中央政府レベルで重要な役割を担っている経済テクノクラートの役割について、国民国家の位置付けが変わることに対応して見直される過程を考察もした。さらに最終成果として、平成21年度のアメリカ政治学会その他において、福祉政策や競争政策に注目して、超国家・国家・地方の関係の変動過程を考察した論文を発表することが決まっている。
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