研究概要 |
今年度の研究は,大きく分けて次の二点にまとめられる. 第一に,中央省庁の人事管理をめぐる政権党と官僚制の戦略的行動を分析した.これまで中央省庁の人事については,主に組織論的な人的資源管理の側面から分析が行われてきたが,これに対して本研究では,政権党による人事管理への介入の可能性と,それに対する官僚制の対応という政官関係の側面からの分析をおこなった. 分析結果からは,政権党による介入の試みは,中央省庁の政策領域に政権党として強く関心を寄せており,かつ政策選好が政権党から乖離している場合などに限られること,他方,中央省庁の側もそれを見越して,防御策として昇進経路などの制度化を進めていることが明らかになった. この分析については,日本語と英語の両方で執筆を既に終えており,公表に向けて学術雑誌への投稿作業を進めているところである. 第二の研究は,本研究からするとやや派生的なものだが,中央省庁ではなく,日本の地方政府を対象として,戦後の政策的展開を計量分析により解明する研究を待鳥聡史(京都大学)と共同で実施した. 理論的には,日本の地方政府における執政制度と選挙制度の特徴から,首長と地方議会の関係は,部門間対抗,部門別棲み分け,政党間対抗など様々な形態をとりうることが予測として導出された.この予測は,財政データを用いた計量分析によって,ほぼ成立していることが検証された. これについては出版物として公表を行った.
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