研究概要 |
今年度は, 三年度にわたる本研究の最終年度にあたる. したがって, これまでの研究成果を公表していくことが, 今年度の主な作業の内容となった. 大きく分けると, 三つの領域で研究成果を公表することができた. 第一は, 現代日本の官僚制について, 特にその人事管理の側面に注目しながら, 計量的なデータ分析を実施したものである. これによって, 政権党による統制の試みに対して戦略的に省庁官僚制が対応している実態を明らかにすることができた. 第二は, 日本の官僚制を, より広く中枢執政の一部と位置付け, 首相や国会議員との間にいかなるネットワーク構造を形成しているかを, サーヴェイ調査の結果を用いながら, 解明した, 第三は, やや付随的な成果であるが, 比較政治制度論の視点から日本の政治システムを解き明かす書籍を出版した. これも, 現代日本の官僚制を他の政治制度との相互作用の下に位置付けていくという本研究の一つの発展的な成果である. これらならびに前年度までの研究をあわせることで, 当初の研究目的であったゲーム理論と計量分析を用いながら, 現代日本官僚制を包括的に解明することができた. 現代日本の官僚制は, 1990年代の選挙制度改革に端を発する政治の側の変容の影響を受けて, 官僚制固有の論理にしたがって一定の自律性をもちつつも, その組織管理のあり方, 政策形成の様態を変化させつつあることが明らかになった. 1990年代以降の日本政治の変容において, 政党や議員の変化に比べ, 総合的な研究成果に乏しい官僚制について, 実証研究を積み重ねたところに, この研究の意義があるものと考えている.
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