本年度は、採択初年度ということで、次年度以降の研究のための準備的作業を中心に行った。 第1に、2007年2月、全都道府県に対して、「汚水処理施設整備のための組織体制及び方法等に関するアンケート」を実施した。 わが国下水道行政の最大の特徴は、汚水処理施設整備のためのメニューとして、国交省(旧・建設省)による公共下水道事業、農水省による農業集落排水事業、環境省(*省庁再編前は旧・厚生省)による合併処理浄化槽整備事業など、所管省庁が異なる各種補助事業が並立している点にあり、「補助金や通達等を通じた、都道府県・市町村への官庁セクショナリズム(割拠主義、縄張り争い)の浸透」という現象が従前、問題視されてきた。しかし、近年、合併処理浄化槽の性能向上とそれに伴う浄化槽整備補助制度の充実、「地域に適合した汚水処理施設整備をすべきだ」という意識の高まり、地方分権改革の実現などの流れにより、状況に変化が生じてきているように思われる。そこで、「変化」をみるために上記アンケート調査を行った。回収率は100%であった。従来、下水道担当部局、浄化槽担当部局、農業集落排水担当部局に分立していたが、近年、組織が一元化された県が13県存在することや、一元化の具体的なメリットなど、貴重な知見を得ることができた。なお、集計・分析結果は、できるだけ早く、雑誌に掲載する形で公表したいと考えている。 第2に、下水道行政の歴史に関する資料・論文等を収集した。今後、研究を一冊の本にしていくためには、歴史部分をより充実化させることが不可欠の作業となると考えたからである。 第3に、下水道行政そのものを扱ったわけではないが、「自治体計画行政の理論と現実」(『現代の地方自治』所収)を執筆した。本稿の中でも、計画間調整に関する部分は、今後、下水道行政をめぐる中央地方関係および部局間関係を分析する際に有用な知見だと考えている。 以上
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