研究概要 |
本年度の研究業績は以下のとおりである。 第1に、下水道行政の展開を理論的に考察した論文を執筆した。(本論文は、近々、『自治総研』誌に掲載が決定しているが、現時点で未公刊のため、下記成果発表項目においては未掲載とした。)これは、2005年度日本行政学会で報告した内容をベースにもとに、追加ヒアリング等を行うことで最新情報をフォローしたものである。また、本論文の中には、科研費助成によって2007年2月に全都道府県に対して実施した「汚水処理施設整備のための組織体制及び方法等に関するアンケート」の結果をも盛り込んでいる。 第2に、省庁間調整および自治体レベルの部局間調整を分析するための理論に関する研究を行った。具体的には、チャールズ・リンドブロムの理論を振り返る作業を行い、岡崎晴輝・木村俊道編著『はじめて学ぶ政治学』(ミネルヴァ書房、2008年)の中の第III部第5章「政策形成(Policy-Making)-リンドブロム,ウッドハウス『政策形成の過程』-」として公刊した。従前わが国では、「一方の省庁が、他の省庁によって否定的な影響を受けていると認識する場合に生ずる過程」としての「省庁間コンフリクト」は害悪としてのみ捉えられがちであり、これをヒエラルキーによっていかに統合するかという点に関心が向きがちであった。しかし、リンドブロムによれば、ヒエラルキーによる一元的な統合は必ずしも好ましい結果をもたらさない。むしろ多様なアクターによる相互調整こそ、政策に多様な利害を反映させ、それぞれの「合理性の限界」を補う「潜在的な知性」を秘めているとされる。リンドブロム理論は、当該研究課題の分析枠組みを彫琢する上で大いに示唆に富むものである。
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