平成20年度においては、昨年度の成果を踏まえ、自治体における特別職公務員制度の形成過程と特別職公務員人事の分析を行った。ただし、地方分権改革の進展に伴い、自治体の人事制度や行政組織制度等が大きく変化していることもあり、特別職公務員制度の実態把握の前提作業として、自治体行政組織や地方分権改革に関連する研究を並行して行った。このうち、一連の地方分権改革を国のコア・エグゼクティブ(執政中枢)の変動という視角から分析する論稿を公表したが、この分析視角は、特別職公務員で構成される自治体のコア・エグゼクティブ分析にも応用可能であり、これらの論稿執筆を通じて、本研究の視座を拡大することができた。 また、関連する学会報告を韓国行政学会(於・ソウル特別市)および日本教育行政学会(於・東京大学)で行った。後者の報告は、教育委員の選任をめぐる政治過程を、犬山市を事例に分析したものであり、本研究の直接的な研究成果をなす。そこでは、首長の政策選択が教育委員会制度の存在により遅延する可能性があることを具体的に検証することを通じて、特別職人事をめぐる政治過程の実態に接近することを試みた。 以上の成果に加え、行政委員会委員月額報酬制違法判決(大津地判平成21年1月22日)により各地で特別職報酬の見直しが進展していることも踏まえ、今後、特別職給与制度の視点も加味する形で、早急に研究成果の総合化を図り、公表を行うことにしたい。
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