本研究は、これまでの地方自治研究においてほとんど触れられてこなかった、日本の自治体における特別職公務員制度の構造と動態について、制度論的な視点から分析を行ったものである。地方公務員法上、特別職とは、議員、首長、副首長、行政委員会委員等、「就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職」や、地方開発事業団、地方公営企業、特定地方独立行政法人の理事・管理者・役員等の幹部職、首長・議長等の秘書のうち条例で指定されたもの、顧問・参与・嘱託員等の非常勤職員等で構成されている(第3条第3項)。このうち、本研究では、(1)副首長や参与、特別秘書等、首長を補佐し、自治体政治行政の中枢を担う特別職、(2)首長と並ぶ執行機関として、首長部局とは相対的に独立した立場で行政運営を行う行政委員会の委員、に焦点を絞り、その位置づけの類型化や、行政委員会委員の人事をめぐる政治過程とその政策的帰結に関する分析を行った。その結果、第1に、首長補佐職については、首長は、自らの政権戦略や議会との関係を踏まえ、特別職として登用する選択を重視しつつも、庁外の非公式なポストに就ける場合もあり、柔軟な選択がなされていることが明らかとなった。第2に、首長と行政委員会が政策的立場を異にする場合、首長は委員人事を通じて自らの政策選好を追求することができるものの、人事を行うタイミングが委員の任期に左右されるため、政策遅滞が発生する可能性があることが、教育委員人事に関する事例研究を通じて明らかになった。
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