研究計画どおり、初年度は福祉レジームとジェンダー・レジームについて、とりわけレジーム形成と持続のメカニズムについての先行研究の整理を行った。昨今は狭義の福祉レジーム論を超え、生産レジーム論や資本主義の多様性論からの国際比較が展開しているが、日本の女性政策や少子化問題をめぐっても、社会政策のみならずより広い制度間の整合性からの説明が現れている。レジームの持続性に関わる制度的補完性を考える上でも、就労と育児の関連に焦点を当てるのが有益と考え、実証研究では少子化問題と育児支援から資料の収集・分析を始めた。昨今の福祉国家論が、レジーム転換に関心を移しつつある点からいっても、少子化は福祉レジームの転換上で重要なファクターである。 少子化問題は近年さまざまな分野で関心が高いが、政治学からの貢献はほとんどない。私は、06年3月に「人口問題と政策-社会保障・税制・労働力供給-」(北九州市立男女共同参画センター"ムーブ"編『ジェンダー白書4 女性と少子化』明石書店)を発表したのに加え、06年度は北海道大学主催のワークショップ「レジーム転換と福祉・労働・家族の政治」で報告した(「少子化問題と政治をめぐる諸論点-少子化はレジーム転換をもたらすか-」)ほか、いくつかの研究会で日本の少子化対策の流れをレジーム転換と言説政治の観点から説明した。その内容を紀要に発表の予定であったが、職場を移ることとなりタイミングの都合などから断念した。初めて少子化についての部会が設けられる07年度の比較政治学会での報告も決定しているので、その成果も踏まえ、活字化の予定である。 なお、06年度に発表した書評論文では、ポスト福祉国家におけるガヴァナンスの問題を考える上で、とりわけ日本について重要なアクターとなる連合と民主党の対応を中心に議論を展開した。
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