研究概要 |
1年目に,レジームの持続性に関わる制度的補完性を考える上で,就労と育児の関連に焦点を当てるのが有益と考え,実証研究では少子化問題と育児支援に焦点を絞ることとした。2年目にあたる07年度も,その作業を継続した。昨今の福祉国家論において,レジーム転換への関心が高まっており,少子化は福祉レジームの転換上で重要なファクターである。また,理論的には,日本の福祉国家の型が少子化をもたらしているという理解と,少子化問題がもつインパクトが,日本の福祉国家の型を変えるといった理解の併存状況を整理した。 少子化問題は近年さまざまな分野で関心が高いが,政治学からの貢献はほとんどない。初めて少子化についての部会が設けられた07年度の比較政治学会で「日本の少子化をめぐるアイディアと政治」という報告を行い,それに対していただいたコメントなども踏まえてリライトした論文を公表した。 また,福祉国家の変容に関して,最も重要なものの一つとして,福祉に対する世論の支持の在り方の変容があるということに気づき,その分野での研究を開始した。手始めに「福祉イメージの政治」という小文を発表した。 なお,福祉レジーム(含ジェンダーレジーム)を考える上で,昨今レジーム論批判についての最も先鋭的な議論を行っているG。カザ教授をインディアナ大学に訪ね,彼の研究について取材を行うことができた。
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