自治体機構・地域住民組織(町内会)との関係変容というテーマに基づき、平成18年度は分析枠組みを構築するだめの文献調査を中心に実施した。政治学をはじめとして、社会学(地域社会学) の諸先行研究をレビューした。それら先行研究から、自治体機構と地域住民組織との接触面(interface)という視点を得て、とりわけそめ接触面を構成してきた「行政協力制度」(行政連絡制度)に着目することが必要であることが明らかとなった。行政協力制度は、自治体機構と地域住民組織との相互依存関係が制度化されたものであるが、一方で自治体機構が地域住民組織に対して公的事務・サービスの執行を委託依頼し、他方で地域住民組織が自治体機構に地域要望を優先的に実現してもらうという関係を基底にもつことがわかった。さらにいえば、行政協力制度には自治体機構から地域住民組織の持つ組織資源を行政内部に組み込むという構図が否定されえず、こうした関係は一見して昨今のパートナーシップ論が主張する官民の役割分担と同じように思えるが、内実は官主導性を孕んでいるということも明らかにできた。ただ、行政協力制度は、自治体機構と地域住民組織との接触面のあり方を規定してきたにもかかわらず、実証的にこの接触面の状況について分析した研究が見当たらないことも分かってきた。 平成19年度は、こうした知見をもとに、全国自治体の実地調査を行う予定である。平成18年度研究で、合併自治体はもとより、自治体機構と地域住民組織の関係変容を考究するには、「協働型行政」を推進する自治体も視野に入れることが有用であることが分かった。自治体間比較により、いかなるガバナンス構造(官民の接触面)がわが国の自治体において形成されているのかを明らかにし、そしてパートナーシップ型ガバナンス達成のための条件、阻害要因を検討したい。
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