研究概要 |
本研究は、少子・高齢社会の進行に伴い福祉サービス需要の増大と減少する労働力人口の折り合いをつけながら、柔軟な福祉サービス供給を図ろうとする自治体の方策について、高福祉社会として定評のある北欧諸国を事例として取り上げ、そのサービス供給構造を詳しく分析しようと試みるものである。 平成18年度は、フィンランドの3つの地方自治体を取り上げ、インタビュー調査を中心とした現地調査を行なった。3つの自治体は、人口約3万人(A)、2万人(B)の比較的類似した地方工業都市と、人口約2,000人の最北にある自治体(C)である。 フィンランドの地方制度は、自治体の業務範囲を明確に規定せず、また業務の具体的な運営方法も自治体の裁量に任される部分が多い。そこで多様な自治体の運営手法がとられていることが予想された。実際に現地調査の結果、3自治体の福祉サービス供給主体の構成は、それぞれ民間主導、自治体から民間への移行中、自治体主導というそれぞれ異なる特徴が見られた。しかしながら、B, Cの自治体では、増大する福祉サービス需要に対して、民間団体を積極的に活用して対応しようとする動きが見られた6すなわち、A自治体のサービス供給主体の構成に近づきつつあるように見えた。また類似したA, Bの両自治体間では、サービス供給主体の構成の違いだけでなくサービスの体系にも大きな違いが見られた。A、B自治体間では、委員会数や委員会委員数に代表される行政機構の大きな違いが見られ、B自治体では、肥大化した行政機構の再構築を試みようとする動きが見られた。
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