研究概要 |
近年社会科学の諸分野において、人間行動・意識のダイナミズム解明への要請を背景として、実験アプローチの導入が進んでいる。政治学実験の歴史も実は古いが、最近アメリカ政治学で見直され、実験研究の数は飛躍的に増加している。研究代表者・谷口も日本の政治学において既に実験研究を行ってきており、本プロジェクトではそのさらなる発展を目指す。具体的な目的は、(1)わが国の政治学における実験アプローチの可能性を探索すること、(2)実験アプローチの導入によって政治行動・意識分析の中心的パラダイムである世論調査を補完すること、(3)有権者の投票行動における「選挙争点」の役割を実験によって明らかにすること、である。 本年度は、実験処置をインターネット調査に組み込んだ「調査実験(survey experiment)」を行った。争点投票に関して異なる質問・選択肢形式で尋ねる調査票を2種類作成し、無作為に被験者に割り当て、質問・選択肢形式の違いが回答に与える影響をテストした。また、インターネット調査におけるサンプルの偏りを検証するため、大規模な訪問面接調査(JES3,アジアン・バロメータ)と同じ質問文で政治意識(政治関心・政治信頼・党派性・保革イデオロギー・争点態度)・政治行動(投票行動・政治参加)・社会意識(一般的信頼・権威主義・社会的寛容)を調べ、結果の比較を行った。結果は2007年度公共選択学会で報告予定である。またインターネットを使った調査実験の統計的問題に取り組んだ論文(Horiuchi, Imai, and Taniguchi,2007)の刊行が決定した。 次年度はこうした成果を踏まえ、政治行動に関する実験室実験とシミュレーションによる検証を行う。
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