本年度の研究業績は以下の通りである。 1、調査実験について 昨年度実施したインターネット調査に組み込んだ実験データに基づき論文を執筆、刊行した。 2、実験室実験について 現代の選挙については、「合理的棄権が多数出現することが予想されるにもかかわらず、実際にはそれなりの投票率が達成されるのは何故か」という「民主主義(投票)のパラドックス」と言われる問題がある。本研究ではこの問題に接近するため、パラドックスの本質、すなわち選挙における公共財供給問題のダイナミクスを明らかにする実験室実験を行った。具体的には、選挙を対戦型公共財供給ゲームと捉えた先行研究の実験室実験に倣い、モデル設計、実験プログラム作成、実験システム構築、予備実験・本実験の実施、データ収集と分析を行い、先行研究の知見を踏襲・進化させる成果を得た。すなわち、このようなゲーム場面においては、投票参加コストのばらつきが投票率低下を抑えること、接戦場面で投票率が高く維持されること、少数派の投票率が多数派のそれを上回る場合が多いこと、コミュニケーション機会を導入すると高い投票率が達成されること、である。本成果は平成20年度開の2つの学会(日本政治学会・日本選挙学会)で報告予定である。
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