本研究は外交史の視点から、1970年代前後を中心に、日本と国連(及びその専門機関)との関係の変化を検証するプロジェクトであるが、平成18年度は資料準備と初歩的な研究作業を行う段階と位置づけられている。まず、資料準備に関し、英国と米国の国立公文書館をそれぞれ訪問し、研究課題と関連性のある責重な一次資料を大量に発見することができた。また、国内において、国連中国代表権問題、ユネスコ、1国連大学などに関する外務省保管文書の開示請求を集中的に行い、その一部が開示されたのである。他方・初歩的な研究作業の一環として、日本国連学会・日本国際政治学会及び北海道大学主催の各種学術会議に参加し、本研究に関する報告を日本語及び英語で行った。更に、これらの研究活動を通して、特に進展のあった部分を二つの論文に纏めた。中では、日本のユネスコ政策に関する英文の論文は既にジャーナルでの掲載が決っており、70年代初頭の国連大学設置問題をめぐる日本外交についての論文も既に脱稿している。本研究のもう一方のテーマである政治面での日本と国際機構との関係に関し、国連の中国代表権問題という具体的な課題を定め、19年度中、論文の準備と執筆へ進めていくことになっている。その際、主に61年から71年にかけて、中国の国連代表権に対する日米英三力国の政策を視野に入れ、比較外交史の視点からこの冷戦の転換期における大国の国際機構外交を形成する国際及び国内攻治的要因を解明していく。今年度の調査を通じて既に一部の史料を入手したが、19年度中は今までの研究成果を踏まえ、再度英国、米国、また必要に応 じて、オーストラリアの史料を補強しながら、英文にて投稿論文の原稿を完成する計画である。更に、 このテーマは極めて幅広いものであり、最終的な研究成果をいずれ単行本にまとめる予定であるが、 その準備作業も19年度中、開始したいと考えている。
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