前年度の資料調査の成果を踏まえ、本年度は補足調査と成果発表の両方に力を入れてきた。まず、補足調査について6月末に英国国立公文書館における二回目の調査を実施し、新たに公開された貴重な資料を大量に入手した。これらの資料を中心に平成19年9月末、中国の国連代表権問題に関する日英両国の政策の比較研究を英文論文に纏め上げ、それを国際関係史分野で国際的な権威を持つ学術誌International History Reviewに投稿した。11月末に同誌の編集者より論文修正に関する知らせが寄せられ、それに従い修正稿を執筆すると同時に、資料補充のため、平成20年2月中旬にオーストラリア国立公文書館において初の資料調査を行なった。その結果、2月末、修正稿を提出したが、3月初頭に同誌編集者から正式に掲載許可の知らせを受け取った。(掲載時期は本年中とされている。)この論文は国連代表権問題を日本の国連外交及び対中政策双方の視点から検証するのみならず、比較外交政策のアプローチも活用する数少ない研究成果であり、原稿を審査する匿名レフリー(3名)全員から高い評価を得ている。一方、本研究のもう一つの焦点である日本と国際文化機構との関係について前年度の後半に投稿したユネスコ協力に関する英文の論文に続き、平成19年9月に、国連大学の創設をめぐる日本と米英両国との外交交渉の過程を分析する論文も完成し、ジャーナルに掲載された。なお、この課題にっいて、英国及び豪州における資料調査の際、更に資料を補充しており、現在英文でより包括的な視点から論文の執筆を準備しつつある。また、本年度中は論文執筆とともに、平成19年10月に東京財団の主催する国連外交についての研究会及び吉田茂国際基金の主催する「吉田茂没後40周年記念シンポジウム」においてそれぞれ研究報告を行ない、いずれも好評を得たのである。
|