研究課題
本年度は、ドナー-アフリカ諸国政府-市民社会間の相互作用をより具体的に分析することを目指し、以下の点での考察を進めた。第一に、依然としてWTO体制下の新自由主義的な国際経済秩序が、アフリカ諸国の対HIV/AIDS政策の選択肢を制約していることを指摘した。特に、TRIPsの改正により、各国で治療薬へのアクセスは拡大したが、先進国と特許を巡る交渉を個別に行う場合、経済的な力関係が反映されることを確認した。第二に、国際的な「テロとの戦い」へのシフトが、対HIV/AIDS政策を含む開発援助にも多大な影響を及ぼしていることを明らかにした。先進国の安全保障にとって重要かどうかを基準として援助資金が割り当てられるとともに、特に現地のNGOへの資金提供を通じた、現地社会の統制が強化されていく傾向を指摘した。第三に、パリ宣言に代表される、ドナー間の協調を重視し、被援助国政府の主体性を尊重する動きが、実際には、ドナーが推進する画一化された政策モデル・運営体制を被援助国に強要する結果となっていることにも目を向けた。背後にはやはり、被援助政府によるドナーへの依存がある。以上を踏まえて、'Who Governs Policies towards the AIDS Crisis in Africa'と題する論文にまとめ、2008年12月にベルリンで行われた国際シンポジウムにて報告した。なお、当該報告論文は加筆・修正の上、University of Tokyo Journal of Lawand Politicsに所収される予定である。また、本研究の中心的な概念である「開発」への理解を深めるために、上記論文と並行する形で、「開発」と密接に関係する「持続可能性」概念を具体的な文脈に当てはめて分析する研究も行った。
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社会技術研究論文集 6
ページ: 124-146
International Journal of Sustainability in Higher Education 9
ページ: 295-316