研究課題
本研究の目的は、食品安全分野における国際規制を形成・促進・阻害する要因について国際政治的観点から解明し、今後のリスクガバナンスのあり方について検討することである。この目的を達成するに当たり、課題に関連する既存研究の文献調査と、実証研究のための食品安全に関する情報収集及びインタビュー活動(政府関係者、科学者、業界関係者、国内外の学術関係者)を実施した。具体的には、遺伝子組み換え食品の安全性評価の形成過程を事例として、80年代半ばから現在に至るまでの国際レベルで展開された様々な議論を調査した。その結果、(1)規制の形成過程における「科学・技術と政治」の相互作用が重要であり、また、(2)最終的に規制を策定する国際機関の特質や内部でのパワーポリティクスの重要性に加えて、そこに至る以前の段階の諸要素(「交渉の場」の選定段階での国際交渉や、交渉に先行して様々なフォーラムで形成されるフォーマル・インフォーマルなコンセンサス等)が及ぼす作用も重要である点が明らかとなった。今後は、これらの要素がいかなるメカニズムで規制の形成に影響をもたらしているのかを、理論的に考察するとともに実証的に検証する。更に、規制の相違に起因する実際の紛争や調整は、バイラテラルの関係から生じることから、国際機関レベルにおける合意形成のあり方の研究と並行して、具体的な事例として日中間の食品規制をめぐる関係(日本におけるポジティブリスト制度の導入が中国の食品安全体制に及ぼす影響)についても調査を実施し、07年マカオで開催されたシンポジウムにおいて研究成果を発表した。本年度は他業務の関連で、食品の国際規格を策定しているコーデックスの部会にテクニカルアドバイザーとして参加する機会を得た。こうした実務経験で得られた現場感覚や人脈も今後の研究に反映し、現場と学問の相互作用をバランスよく行いたい。
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Proceedings, International Symposium on Food and Water Sustainability in China 2007, Jan 18 and 19, 2007 in Macau, China
ページ: 174-182