平成19年度は、対人地雷禁止レジームの形成が、小火器規制問題、クラスター兵器禁止運動、対戦車地雷規制強化といった動きにいかなる影響を与えているのか、その際市民社会はいかなる役割を果たしているのかについて検討を行った。とりわけ、軍縮・軍備管理問題における各国政府とNGOの関係がいかに変容しているのか(いないのか)について焦点を当てて、これまで進めてきた軍縮・軍備管理問題における事例研究に加えて、反グローバリゼーション運動、医薬品特許を巡る事例等とも比較しつつ、分析を進めた。その成果として、対人地雷禁止条約形成過程の経験の援用が試みられた国際刑事裁判所設立過程について分析をおこなった学術論文、「『新外交』による国際規範形成-国際刑事裁判所設立過程を事例として」を公刊した。また、19年度日本国際政治学会部会13(国際制度論の再検討)で「国際制度形成過程における国家-NGO関係:共鳴・協働・競合」と題して19年度国際安全保障学会分科会1では、「軍縮・軍備管理問題におけるNGOの役割-協働・取込・触媒」と題して、立命館大学人文社会研究所主催国際シンポジウムでは、"Changing Roles of NGOs in the Age of Globalization"と題して発表した。 また、19年度は対人地雷禁止条約の形成過程を援用する形で、クラスター兵器の禁止条約形成を進めるいわゆるオスロプロセスが進められていたため、当プロセスの進展に焦点を当てて重点的に調査を行った。その際、プロセスの進展ついて調査を続けると同時に、20年3月にはロンドンに赴き、クラスター兵器連合のコーディネーターを務めるトーマス・ナッシュ氏にインタビューを実施した。 以上のような調査によって具体的にレジーム間の関係を浮き彫りにするとともに、軍縮、軍備管理問題にとどまらず、NGOがレジーム間の相互作用を促進したり、阻害したりする過程についての、研究を進めることができた。
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