1、研究の概要 本研究の1年目にあたる平成18年度においては、平成18年9月及び11月に2回のオーストラリア現地調査を行い、専門職移民導入促進政策に関して、連邦政府及び州政府担当者へのインタビュー及び資料収集を行なった。さらに、平成19年3月には、国立図書館において追加的な資料収集を実施した。またこれらの現地調査においては、豪州政府が実施している、専門職移民誘致のための「スキル・エキスポ」を参観した。 2、得られた知見 これらの調査から得られた知見としては、豪州の連邦政府及び州政府における専門職移民導入のための積極性であり、経済的好況によってもたらされた各種の技術者不足を、専門職移民の導入促進政策によって解消しようとする姿勢である。このことは、特に1996年に成立したハワード政権の方向性と密接に関連しており、以前の労働党政権下の中心であった、「家族移民」から、重点を「技術移民」に移し、その受入数を大幅に増加させていったことに表れている。本研究が調査の対象としている専門職移民導入促進のためのさまざまな取組みは、こうした「経済的利益達成のための移民政策」という移民政策そのものの位置づけのあり方が如実に表れていることが明らかとなった。 また、豪州を含む移民受入国間で、さらには豪州国内の各州間において、専門職移民導入促進のために、激しい競争が展開されていることも把握できた。 3、成果発表 今年度得られた以上の知見については、平成18年9月29日に国連大学で行なわれた外国人政策研究所主催シンポジウムにおいて「外国人の社会統合制度論豪州の事例を参考に」として報告し、また、平成19年2月に雑誌『世界週報』において、本研究で明らかとなった豪州の専門職移民政策について解説・分析を行なった。
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