本研究の目的は、多くの難民か第一次庇護国で長期的難民状態であるアフリカ難民受け入れ国に対してどのような支援を行ない、どのような「負担分担」(burden-sharing)に関する国際協力が可能であるかを検討することである。そのため、これまで難民支援を開発援助とリンクさせた難民受け入れ国である、ザンビア、ウガンダの事例を分析するとともに、主要支援機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および主要ドナーであるデンマーク、ドイツなどの取り組みを調査してきた。本年度は、昨年度に引き続き、書籍、資料等を入手し、精査するとともに、下記の(1)〜(4)のことをなった。 (1) コンベンション・プラス・イニシアティブ(CPI)に関するUNHCRの取り組みと問題点を明らかにするために、ジュネーブのUNHCR本部、デンマーク、英国でUNHCRスタッフ、UNHCR元スタッフ、および研究者に対してインタビューを行なった。 (2) 難民開発援助のドナーの動向を分析するために、デンマークで外務省およびNGOスタッフにインタビューを行なった。 (3) 平成18〜20年度にかけて行なった調査をもとに、ウガンダに居住する2つのタイプ難民(「自主的に定住する難民」(self-settled Refugee)と「都市難民」(urban refugee)のライブリーフッドに関する原稿「サハラ以南アフリカの難民と定住化」を執筆した。本稿は、『ブラック・ディアスポラ』(小倉充夫編)で2009年に明石書店より出版される予定である。 (4) 本年度に行なった調査をまとめた「長期的難民状態と難民開発援助に対するドナーの動向」を執筆した。本論文は、2009年5月に『神戸学院法学』にて刊行される予定である。 難民開発援助を通して従来あまり注目されてこなかった、長期的難民状態やそれに付随する問題、及び第一次費庇護国の「負担分担」を具体的な事例から分析した点に本研究の意義があるといえよう。
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