研究概要 |
本研究の目的は,環境の保全と経済の成長・発展との関係を,経済学における非線形均衡動学理論の最近の発展を踏まえて理論的な側面から検討するものであるが,関連する分野(環境経済学,経済成長理論,非線形動学)における理解を深めることの重要性から,関連分野の書籍や論文の整理および検討,ワークショップへの参加を行った。資料の整理においては学生アルバイトを雇用し,またスキャナーによる資料の電子化も行った。 自らの理論モデルの構築および分析については,以下の2点が主要な研究成果である: ・論文"Indeteminacy and Comparative Advantage in a Dynamic General Equilibrium Model with Pollution"のセミナーでの報告および学術誌掲載 ・論文"Impatience,Pollution,and Indeteminacy"の学会報告および学術誌への投稿いずれも,経済活動において環境汚染が発生し,資本蓄積を通じて経済が成長していくような動学的一般均衡モデルを構築し,この経済の均衡動学経路の不決定性について検討したものである。前者においては小国開放経済を想定しているのに対し,後者においては閉鎖経済のモデルを分析している。 以上の主要研究のほかに,関連する研究として次のような研究活動を行った: ・論文"Global Pollution,Dynamic and Strategic Policy Interactions,and Long-run Effects of Trade"の学会報告 ・論文「公共財の自発的供給と経済成長」「貿易自由化と地球環境」の大学紀要掲載 ・論文「コモンズの悲劇と非線形経済動学」の研究書掲載 これらの論文で用いられた動学ゲーム理論のアプローチは,環境の利用における複数の経済主体間の相互依存関係を考慮に入れた経済成長モデルにも応用月能であると考えられる。
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