本研究の目的は、環境の保全と経済の成長・発展との関係を、経済学における非線形均衡動学理論の最近の発展を踏まえて理論的な側面から検討するものである。平成20年度は研究の仕上げの年度であり、前年度までの研究成果については投稿した論文の学術誌への最終的な掲載決定を目指し、また新たな分析結果が得られた場合は学会・研究会で報告し、論文を投稿した。 具体的には、以下の3点が主要な研究成果である : 1. 論文"lndeterminacy and Pollution Haven Hypothesis in a Dynamic General Equilibrium Model"の改訂および学術誌への投稿 2. 論文"Endogenous Time Preference and Consumption Externalities in a Small Open Economy : Multiple Steady States and Indeterminacy"(南山大学唐澤幸雄准教授との共著)の学会報告および改訂 3. 論文"Transboundary Pollution and Indeterminacy"の学会報告 いずれも、資本蓄積を通じて経済が成長していくような動学的一般均衡モデルを構築し、この経済の均衡動学経路の不決定性について検討したものである。成果1と成果2はそれぞれ、生産活動から環境汚染が発生する状況、各個人の瞬時的効用および効用割引率が自分の消費水準のみならず他人の消費にも依存する状況を想定し、小国の貿易モデルを分析している。成果3は、2つの地域間で経済活動から発生する汚染が互いに越境する状況を想定し、越境汚染が不決定性に与える影響を検討している。 以上の主要研究のほかに、関連する研究として、環境の利用における複数の経済主体間の相互依存関係を考慮に入れたモデルを構築し、動学ゲーム理論の枠組みで分析を行った論文を複数発表した。
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