平成20年度は、第1に、昨年度に引き続いて『大転換』後のポランニーが晩年まで追及した<経済と社会>というテーマ、それを追求するための<社会における経済の位置>という制度主義的方法を検討した。経済学者であるロビンズやナイトも関与した、英米におけるウェーバー受容とポランニーの接点がこの晩年のポランニーの研究計画において重要であることを提起した研究報告を内外の学会で示した(経済学史学会第72回全国大会、開催地 : 愛媛大学、第11回カール・ポランニー国際会議、開催地 : モントリオール)。晩年のポランニーの研究業績が経済人類学の専門分野に狭く位置づけられてきた経緯をこの観点から相対化した本研究成果報告は、ポランニー国際会議において盛況な議論と好意的な反応を獲得した。 第2に、イタリア、ドイツ、フランスの研究者らによって近年相次いで刊行された、カール・ポランニーの未収録著作集を検討し、とりわけ1927年の自由論と1930年代から鋭く展開された民主主義論の解読を集中的に行なった。その研究成果として、千葉大COEプログラム(労働と公共性部門)の研究会での報告および論文を執筆した(「カール・ポランニーにおける市場社会と民主主義」、安孫子誠男・水島治郎編著『労働一公共性と労働一福祉ネクサス』勁草書房、2009年9月公刊予定)。また、イタリア経済思想史学会若手育成=国際交流プログラムに参加し、本研究課題を単行本にまとめるための準備の一環として、「なぜポランニーは経済思想史において読まれなかったか?」という報告を行い日本におけるポランニー受容の課題などを提起し、助言を得た。
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