一般に操作変数と内生変数の相関が弱いとき、操作変数推定量に関する漸近的性質はあてはまりが悪くなり、通常の検定統計量や信頼区間は大きなバイアスを持つことが知られている.本研究の目的は、この弱操作へ変数問題に対して頑健な方法を用いて、主にオイラー方程式の推定に関わる実証上のぱずるを再検証し、弱操作変数への対処方法と経済学的な含意を明確にすることである。平成18年度は、研究計画に従って、近年確立された弱操作変数の検出法と弱操作変数に対して頑健な推定法を、代表的家計モデルの動学的最適化問題から導出される対数線形オイラー方程式に応用した.今回の分析では先行研究との比較が可能となるように、Kreps-Porteus型選好を仮定した一財モデルと米国のマクロ・データを利用した.まず、弱操作変数問題の有無をF値対応の検定統計量を用いて評価した.先行研究で用いられた実質利子率と株式収益率に加えて、代表的家計の総資産収益率を利用した.最後に、分散不均一性に対しても頑健な3つの統計量から信頼区間を再推定し、弱操作変数と分散不均一性の両面から、推定結果の制度を評価した.以上の分析より、実質利子率と総資産収益率を用いたモデルは弱操作変数の帰無仮説を棄却する可能性があることが明らかとなった.また、弱操作変数に対して頑健な方法を用いたとしても、以前として初期の研究が明らかにして異時点間代替の弾力性の下方バイアスが存在することを確認した.
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