分位点の推定の問題は統計学・計量経済学において非常に重要な問題であり、多くの先行研究がなされてきた。しかしながら、それら先行研究における手法を高分位点の推定に応用するには様々な問題があり、満足のいく方法は存在しない。平成18年度は、この問題を、極値理論を用いることによって解決する方法について研究を行った。具体的には、高分位点推定に関して、極値理論を用いた既存の推定量に関する基礎研究を行い、既存の推定量の推定精度の改善という課題について主に研究を行った。その結果、(1)シミュレーションによると、推定に用いる順序統計量の個数を適切に選択すれば、推定精度がかなり改善されること、(2)極値順序統計量に関しては、通常のブートストラップ法は機能しないが、極値理論の結果に基づいたブートストラップ法は、有効であること、(3)高分位点の推定に用いる最適な順序統計量の個数の選択に、極値理論に基づいたブートストラップ方法が有効であること、が判明した。これらの結果は、京都大学における計量経済学セミナーと統計数理研究所における共同研究集会『極値理論の工学への応用』によって報告された。また、これらの研究とは独立に、既存の推定量が漸近的に正規分布に従う条件に関する研究を行った。さらに、分布を仮定することなしに、高分位点を正確に推定する重要を示すために、国際株式市場のデータを用いて、実証研究を行った。そこでは、モデルが正しく特定化された場合でも、分布の特定を誤っただけで高分位点の推定が大きな影響を受ける場合があることを示した。
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