| 研究概要 |
本年度は, 前年度に引き続き, カーネル密度推定法にリサンプリング法を応用することを考えた。昨年度までに行ったサーベイにより, 1, バッギングが効果をもたらすのは, 通常のブートストラップ法による分布の近似が有効でない場合ということ, 2, カーネル密度推定においては, 推定量のバイアスのため通常のブートストラップ法が有効でないこと, 3, カーネル密度推定においてはバッギングの効果が得られないこと, の3点が明らかになっている。
カーネル密度推定法においては, バンド幅と呼ばれるパラメータの選択が非常に重要であることが知られている。バンド幅の選択方法は, いくつかの方法があるが, 多くの文献においてクロス・バリデーションによる選択が推奨されている。クロス・バリデーションで選択されたバンド幅は, カーネル密度推定量の平均自乗誤差を最小化する値に確率収束することが知られているが, この場合, 信頼区間は推定量のバイアスを受けることになる。したがって, 推定量のバイアスが信頼区間にどのような影響を及ぼすか調べるため, シミュレーションによる分析を行った。シミュレーションの結果から, 1, バイアスを理論的に取り除けば, ブートストラップ法による近似はかなり良好であること, 2, バイアス修正を行ったとしても, バイアス項の推定精度の低さのため, 信頼区間の精度はかなり低くなってしまうこと, 3, バイアスを無視した信頼区間の精度はそれほど低くないことが分かった。以上の結果から, バンド幅の選択にクロス・バリデーションを用いた場合, バイアス項を無視するのは現実的な方法であると考えられた。
しかしながら, バイアス項を無視する方法は, バイアスが非常に大きいときは有効でないことが予想されるので, 更に正確な結果が期待できる方法(例えば, スムーズド・ブートストラップを応用する方法)等を検討する必要がある。
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