本年度は、2007年経済センサスや産業連関表における北米生産物分類体系(NAPCS)の導入状況に関して、アメリカのセンサス局や経済分析局(BEA)等を対象としてヒアリングを行った。その結果、07年経済センサスでは、全てのサービス部門についてNAPCSに沿った調査が実施されており、サービス業の生産物ごとに極めて詳細な情報を把握していることが明らかとなった。ただし、NAPCSの産業連関表への適用については、現時点では計画されていない。 また、2004年・2005年の工業統計調査の個票データを接続して作成した工業統計パネルデータを用いた分析により、事業所を調査単位とする工業統計調査等の一次統計調査や、産業連関表等の加工統計に従来の日本標準産業分類を適用した場合の問題点を明らかにした。第1の問題は、需要べースの分類概念に基づいて設定された産業部門を工業統計調査に適用した場合、事業所の産業間移動が多発すると同時に、当該産業部門の生産額の中に他の産業に格付けられるの製造品の生産額が多く含まれてしまうことである。これによって、産業別の生産規模や産業構造変化を的確に把握することが困難になってしまう。また第2の問題は、需要べースの分類概念に基づいて設定された産業部門を産業連関表に適用した場合、投入係数が極めて不安定になることである。この問題は、産業連関表を用いた波及効果分析の精度を著しく低下させることにつながる。 以上のようなヒアリングおよび分析の結果、今後の我が国における統計体系の整備に向けた課題として、1、供給ベースの分類概念のみに基づく産業分類体系を早急に整備すること、2、サービスを含んだ需要ベースの分類概念に基づく生産物分類体系を構築すること、3、1および2で述べた産業・生産物分類体系と整合的な経済センサス調査を実施し、投入・産出両面にわたる詳細な項目を調査すること、をあげている。
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