1992年から2002年まで十年間のデータは中国GDPの成長はFDIに大いに依存することを示した。19年度は18年度の調査結果を踏まえ、Harris-Todaro(1970)モデルをベースに外資企業の行動や土地市場をも考慮した二部門二産業モデルを開発し、FDIの増加が都市部における失業者の増減にどのような影響を与えるかを分析した。結果は、FDIの増加が都市部の失業状況を悪化させることを確認した。つまり、FDIの増加は都市部により多くの就業機会を提供するが、同時に、それを上回る農村部における大量の潜在失業人口の都市部への移動をも誘致した。結局、都市部の失業人口が暴増することになった。FDIを減少させると、中国失業問題が多少緩和されるがGDPの成長が大いに影響されることになる。さもなければ、中国失業問題がますます悪化していく傾向がある。という騎虎の勢いにある中国労働市場の現状を本モデルにより、上手く説明することができた。 中国において土地は国に所有されており、政府が都市部と農村部の土地割合を決定する。そのため、本研究は土地分配率を政策変数として都市部の失業問題の緩和策を探り出すことを試みた。分析結果はより多くの土地を都市部門に割り当てるほど失業状況が改善されることを示した。この政策は現在の中国において実行可能であるが、土地私有化の問題が中共の統治の合理性を揺るがしかねないため、この政策も中共にとってもろ刃の剣のような存在であろう。 上述のモデルと分析結果は日本、中国および台湾などの大学の講演会や学会に発表して中国問題専門家と意見を交換してたくさんの有益なコメントを得た。20年度はこれらのコメントを考慮に入れてモデルを修正して国際ジャーナルに投稿する予定をしている。
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