今年度の主な研究成果は、(1)改訂中であった寡占市揚下での特許ライセンス交渉に関する論文が国際専門誌の審査を通過したこと、(2)携帯電話端末価格のヘドニック回帰分析を行い、理論的帰結のデータによる裏づけが得られたことである。前者にっいては、一般的な市場構造を想定しながらも、交渉結果として合意されうる特許ライセンス契約の特徴を明確にした。特に、非常に多くの配分を含むことが一般的な解概念である交渉集合が、ある条件の下で一点集合となることを見出した。これはライセンス交渉の結果の予測を容易にし、企業の研究開発のインセンティヴを正確に算定する研究に繋がるだけでなく、競争政策立案の際のヒントにもなる結果である。後者については、これまで産業全体での分析しかなかったヘドニック回帰分析を、携帯電話キャリアごとに行った。これにより、各キャリアの製品・価格戦略を明確に捉え、特に、au(KDDI)とソフトバンク(ボーダフォン時代を含む)の間に製品属性制御済みの価格のターンオーバー・サイクルを見出した。これは、前年度の研究成果として報告理論的帰結の実証研究による裏づけであり、今後の動学的産業構造の理論・実証研究の方向を指し示す結果である。また、フランチャイズ契約における理論と実証の乖離を埋める研究に進展があり、現在、国際専門誌にて審査中である。実験とシミュレーションによる研究プロジェクトも進行しつつあり、諭文としてまとめる目処が立った。
|