特許ライセンス問題についての論文を査読付き国際専門誌International Journal of Game Theoryより刊行した。そこでは、特許技術の売買契約を交渉によって締結する場合、特許権者は何社と交渉するべきかという問題が考察され、一般的には非常に多くの交渉妥結点を含む解概念である交渉集合がある条件の元では一点に定まることを示された。それに続いて、市場に非常に多くの企業が存在する場合には、交渉集合は常に一点になり、更に非協力ゲームのメカニズムを利用してライセンスする場合と全く同じ結果を導くことを示した。この研究成果を東京工業大学ディスカッション・ペーパー(社会工学)として纏め、査読付き国際専門誌に投稿した。また、動学的産業構造の理論を実証すべく、日本の携帯電話端末の属性調整済価格(QAP)について推計を行い、前年度までに作成した理論モデルによって予測されていたQAPのターンオーヴァー・サイクルを見出した。これは、激しく市場シェアを争っている事業者はお互いのQAP引き下げ時期を戦略的に決定し、同時期のQAP引き下げは大きな市場シェア獲得には至らないことを認識することから得られる予測であった。日本ではauとSoftBankの携帯電話端末に、QAPのターンオーヴァー・サイクルが観察された。NTT DoCoMoは推計期間中、50%以上もの市場シェアを持っており、上記理論予測の対象外であった。しかし、他者製品のQAPとの差が大きくなったことで、QAPを下げ始めたことが観察された。これは他者に市場シェアを奪われ始めたことに起因する。この成果は筑波大学ディスカッション・ペーパー(社会システム・マネジメント)として纏め、査読付き国際専門誌に投稿した。現在、理論モデルの完成を急いでいるところである。
|