平成18年度までに整備してきた理論モデルは、所有と運営の分離がある場合とない場合の混雑した高速道路における社会的に最適な容量と料金に関する政策の分析を行うことを目的としている。高速道路の料金設定については、ETCの普及により、通勤時間帯割引、夜間割引等が実施されている。また、近年の旧道路公団の民営化は高速道路の管理運営の仕組みに本質的な変化を与えた。このような状況の中で最適な高速道路政策を策定するにあたっては、現実をよく叙述したシミュレーションに耐えうる形に理論モデルを適宜加工する必要がある。 このような要請から平成19年度においては、理論モデルをシミュレーションに適用するための加工作業を行ってきた。具体的には「旧道路公団のシステムを反映したモデル」及び「現在の高速道路会社のシステムを反映したモデル」の2種類のシナリオを想定することとした。前者については、所有及び運営が一体かつ公的な主体であり、料金は単位距離当たり一定と仮定、社会的最適と比較した場合の社会厚生や各政策変数の変化を分析する。後者については、所有と運営は分離されており、運営側は利潤最大化を目指しつつ所有側には収支均衡(償還)制約があると仮定、社会的最適からの乖離および旧道路公団システムとの比較分析を行う。このような作業計画のもと、今年度は前者の旧道路公団システムを叙述するモデルの構築及びシミュレーション作業を行ってきた。この作業の一貫として、平成19年11月22日に「高速道路の最適料金を促す料金設定に関する研究委員会のワーキンググループ」(座長:竹内健蔵東京女子大学教授、主催:高速道路調査会)の委員会において検討モデルの発表を行った。 なお理論モデルについては第11回世界交通学会(WCTR)のConference Proceedings CD-ROMに所蔵された。
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