平成19年度までに開発した理論モデルについては、次善の問題の定式化およびその一階の条件から解を分析的に求めることが難しいため、平成20年度には常磐道をモデルとしたシミュレーションを行った。このシミュレーションモデルでは、運営、所有ともに公的主体であるような上下一体(垂直的統合)の場合を考え、単位距離あたり均一料金の制約が課されている料金体系のもとでの次善の問題を考察した。この分析の目的は、均一料金制度の社会的費用の定量化 ; 最適な容量や料金と、次善の(均一料金制度の)それらとの各地点における比較 ; 各地点における交通量や混雑度の最適と次善での比較などである。 このシミュレーション分析の結果として、以下のような諸点が明らかとなった。 ・画一料率制約及び収支均衡制約がないファーストベスト(ベンチマーキングケース)の場合、1日当たり3億800万円の余剰が発生し、料金は都心では56.2円/km、地方では、9.2円/kmとなる。 ・ファーストベストに画一料率制約を付加したセカンドベストの場合、余剰に関してはファーストベストと比較してほとんど変わらず、料金は全線37.8円/kmとなる。 ・セカンドベストに収支均衡制約を付加したサードベストの場合も余剰に関しては、ファーストベスト、セカンドベストとほとんど変わらない。また、料金は全線17.2円/kmになる。 ・シミュレーション結果を解釈する限りにおいては、料金よりも交通容量の選択が厚生改善に与える影響が大きい。 ・弾力性(今回は0.6である)等の設定を変えることで、料金の方がむしろ厚生改善に与える影響が大きいという結果が得られる可能性がある。
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