今年度は、前年度に引き続き、市場規模が職業選択にどのような影響を及ぼすのかについての研究を行った。これまでのところ、独占的競争の枠組みを用いた起業行動のモデルを構築し、それを基に、日本の都道府県データを用いて、起業行動が市場規模によりどのように左右されるのかについて分析した。その結果、当該地域の市場規模が極めて重要な要因であり、その影響はnon-monotoneである可能性が明らかになった。さらに、その効果は、これから起業しようとしている人の意志決定と、その結果である自営業比率に対して異なる影響を及ぼしていることが明らかになった。まず、起業の意思に対しては、市場規模は正の効果を持ち、市場の大きな地域ほど起業の意思を持つ人の比率が高いという結果を得た。次に、自営業比率には市場規模は負の効果を持ち、市場の小さな地域ほど自営業比率が高いことが明らかになった。この結果は、Duranton and Puga(2001AER)の理論と整合的であり、大都市が起業の源泉となり得ることを示していると考えられる。 更に、地域経済統合が企業合併に及ぼす影響についての分析を開始した。これまでに、異質な企業同士の合併がどのような条件下で起こり、また、それが望ましいのかにういての詳細な分析を行った。さらに、そうした合併が次の合併を引き起こし、合併の連鎖につながるのかについても分析を行った。今後はさらにR&Dの効果も含めて分析を行う予定である。
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