PCB(ポリ塩化ビフェニル)やアスベストなど、数十年前に製品に使用されて販売されたものの、後にその有害性から使用が禁止された化学物質の引き起こす環境汚染が顕在化しつつある。本研究の目的は、製品として市場に出回ってから有害性が認識されたために、潜在的な汚染源として社会に分散して存在し、適切な保管や回収や処理を促す必要性が後発的に起きるタイプの環境汚染を「散逸型環境問題」として捉え、これに対する政策のあり方を経済学的な視点から分析することにある。 寿命の短い製品は、生産・消費・廃棄という製品ライフサイクルが素早く回転する。したがって環境中への汚染物質排出を抑制するにあたって、生産段階での対応をとることが可能である。一方で製品機器や建築物など寿命の長い製品については、生産段階を既に過ぎてしまった後に有害性が認識され、非常に長い消費(つまり使用)段階において後発的な対応をせざるをえない場合がある。 本年度は昨年度に引き続き、こうした「散逸型環境問題」に関して、汚染を引き起こす可能性を秘めた製品を効率的に発見するにはどのような方法がありうるか、という視点から研究を進めた。低濃度PCB汚染機器のデータを用いて、機器の汚染度がどのような属性に回帰できるかを検討し、サンプリングの偏りを考慮に入れた計量経済学的なアプローチの適用について考察した。本研究のような方法論を用いて汚染度を高める属性を特定化した上で、効率的に汚染源を発見し、すみやかな対策につなげる必要がある。また、処理費用の負担スキームについても考察をおこなった。
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