研究概要 |
当初の予定通り、サービスの利用者による外部性の問題を扱う理論モデルを構築した。当初は、第一段階として、Matsumura and Matsushima(2004,Economica)による理論モデルを基本にして、利用者数に応じた負の外部性が発生する状況を組み込んで分析を行う予定であったが、分析の過程で当初の計画では想定していなかった重要な問題が発見されたため、その問題を解決することから行った。 本研究で当初想定していた外部性が存在する下での、最適な価格規制の水準について議論した。この研究では、混雑による負の外部性を解消する努力を複占市場における各企業(両企業とも私企業)が行う状況を考え、その下での混雑度と均衡価格を考察している。ここでは、価格規制が存在する状況としない状況を比較している。その結果、混雑の解消には費用がかかるにも関わらず、最適な価格規制の水準は、規制が存在しない状況での均衡価格よりも低いことが示される。混雑度の観点では、規制価格水準を高めに設定する必要が無いことを示しており、政策上、興味深い結論である。この結果は、Economics Le廿ersに公刊されることが決まっている。この研究を、混合寡占の枠組みに拡張する予定である。 同じ混合寡占市場の分析という点で関連性のある研究として、外国資本が参入した場合の公企業の存在意義を、製品差別化の要素を取り込んで理論的に考察した研究がある。これは、ディスカッションペーパーの形でまとめられている。この研究では、参入企業数が固定されている場合(短期)と、自由に参入できる場合(長期)を比較し、各状況下での民営化の是非を議論している。その結果、外国資本の割合が高いほど、長期の視点では民営化が望ましいことが示されている。 これらとは別の諭文が査読誌に公刊された。
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