研究概要 |
平成18年度には以下のような研究を実施した. まず,本研究に関連する最近の文献等を収集し,GATT/WTO体制の現状と,「貿易と環境」および「貿易と労働」に関する現在の主要な争点と既存研究の知見に関して,経済学的研究のみならず,法学的研究に関しても整理を行った. それらの争点の中で,特に食品安全性問題や生物学的侵入問題等に対する政策である,衛生植物検疫(SPS)措置に関わるSPS協定に関して,経済学的な視点から予備的な理論分析を行った.その結果,経済学的な視点が欠落しているという批判がされているSPS協定に関して,経済厚生を改善する役割を果たしうること,その一方で偽装された保護貿易主義につながるような問題点があることなどを明らかにした.これらの予備的な分析によって得られた成果については,国内外の研究会・学会等で報告を行い,関係研究者等からの意見や助言をいただいた.この成果に関しては,平成19年度にさらに分析を進めた上で,論文を査読付学術専門誌に投稿する予定である. また,産品非関連PPMsとの関係で貿易制限措置が難しいとされる,木材の違法伐採問題への対応に関して,森林の違法伐採およびその対策の現状を調べると共に,理論的な分析を行った.その結果,ある国における違法伐採の増加が,木材の国際価格下落を通じて他国の違法伐採を増加させるような効果がありうること,それに対して,現行のGATT/WTO協定では許容されないが,産品非関連PPMsによって製品を区別し,違法材のみを排除するような措置が効果的であることなどの結果が得られた.これらの成果について現在論文を執筆中である.平成19年度においてさらに分析を進めた上で,国内外の研究会・学会等で成果を報告すると共に,論文を査読付学術専門誌に投稿する予定である.
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