研究概要 |
平成19年度には以下の研究成果が得られた. まず,産品非関連PPMsとの関係で貿易制限措置が難しいとされる,木材の違法伐採問題への対応に関して,昨年度に開始した理論分析をさらに進めた.その結果,EUのFLEGT制度のような,木材の輸入国が主要輸出国との間で二国間協定を締結することで違法材を排除する取り組みは,協定締結国内で違法伐採を減らすだけでなく,他の輸出国でも違法伐採の減少が見込めるという結果が得られた.この理論分析について論文にまとめ,国内外の学会等で報告を行うとともに,査読付学術専門誌に投稿中である.また,貿易制限措置の輸入国への影響や,一国内で合法材と違法材が混在するケースなどに分析を拡張することを試みた. さらに,食品安全性問題や生物学的侵入問題等に対する政策に規律を与える,WTO協定のSPS協定に関しても,昨年度に開始した理論分析をさらに進め,国内の研究会で報告を行った.これについては,さらに分析を進め,平成20年度に論文の改訂を行っていく. 平成19年度に新たに取り組んだ研究として,地球温暖化問題への国内対策と国際貿易との関係がある.例えばEUは,温暖化対策が不十分な国から輸入される製品に対して「炭素関税」を課すことを検討中であるが,こうした措置はGATT/WTO法に抵触する可能性があると言われている.こうした問題に関して,関連する先行研究をサーベイするととともに,各国の温暖化対策の現状について情報を収集した.このトピックに関しては平成20年度にさらに詳細な分析を行う予定である.
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