日本の製造業の多くはアメリカに進出しており、アメリカの欠陥製品訴訟に常にさらされている。本研究課題の目的は、アメリカ合衆国で起こされた日本企業の欠陥製品訴訟・判決がどのような波及効果を日本企業の企業価値にもたらすのか明らかにすることである。 今年度は、当初の計画通り、既存文献をサーベイした後に、データセットの構築を始めた。自動車産業と機械産業の上場企業について、海外の判例データベースを用いてアメリカでおこされた製造物責任訴訟の判決をすべてデータセットに入力した。 今年度分かったことは、当初考えていた通り、判決額の懲罰的賠償金を伴って巨額になるケースがあったこと。また、企業が敗訴したケースが少ないことである。これは、訴訟になると匿名性か保てないので、敗訴しそうなケースは和解している可能性が高いと考えられる。つまり、判決までいたったケースは、企業が自分たちは敗訴しないと確信しているケースである。実際には、判決にいたるまでに棄却されているケースが多い。 ケースを調べていくうちに初めて気づいた事実もあった。アメリカの司法制度は、日本と違い、州裁判所と連邦裁判所の両方がある。原告(消費者)が州裁判所に提訴するか、連邦裁判所に堤訴するこという、選択の問題がある。この選択の問題について、実際に原告の期待通りの判決が得られているかデータセットを利用して検証可能である。次年度、実際に論文をまとめるにあたって、この点を詳細に見ていく予定である
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