本年度は、本補助金により、知的財産取引の実証分析に用いるデータベースの構築を行った。具体的には、ライセンシングが特に重要である化学産業に焦点を当て、農薬市場における国内のみならず海外のライセンシングに関するデータを購入し、実証分析の基礎となるデータベースを構築した。各製品に対して開発企業とライセンシングを受けた企業をそれぞれデータベース化し、それらの製品がどの国の市場において導入されたか等の付随する情報についてもデータ化を行った。また、それらデータを分析する際のハードウェアについても導入を行い、数値計算集約的な研究に用いるインフラの整備を行った。 このデータを用い、国際的なライセンシング行動がいかなる要因により行われているのかについて分析を行っている。具体的には、各企業の特性のみならず、ライセンシング行動をネットワークの中に位置づけ、企業がいかなるライセンシングネットワークを構築しているかに着目し、個別のライセンシング行動とネットワークとの関係を分析した。 そして、ライセンシング行動のみならず、知的財産取引として企業のノウハウの移転などを考慮するために、直接投資についてもデータの整備を行った。直接投資には、新規に子会社を設立するケースと合併買収によるケースとがあり、これら両方についてデータ整備及び企業調査を行った。この点に関しては、化学産業のみならず、他の産業についても知的財産移転の観点から、特に自動車産業に関して分析を行った。
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