本年度は、国際取引に関わる制度や規制の変化とその企業行動に与える影響について分析を行った。特に、海外市場と日本企業の関係性に焦点を当てた。データベースの構築と共に、制度的要因を整理し、実証分析等を行った。特に、近年の日本における独占禁止法の改正、商法、会社法の改正を通じて、企業の研究開発、M&A、企業統治にいかなる影響が及ぼされたかについて、実証的また、制度的な考察を行った。実証分析では、日本企業の研究開発とM&Aに焦点を当て、制度的要因の違いが、国内のM&Aと国際的なM&A、特にM&Aの規制が日本に比べて緩和されていた時代のアメリカに対するM&Aにいかに影響を及ぼしたか考察を行った。積極的に自社研究開発を行う日本企業は海外M&Aを行う一方で、国内M&Aについては研究開発との関連は認められなかった。また、中国に進出した日本企業と現地企業、及び第三国の企業の分析から、企業の海外進出が、垂直的分業を通じて需要を喚起し、ローカル企業の参入のみならず、進出国および第三国の企業の参入を促す点を考察した研究も行った。これらの研究により、企業の研究開発が、法的制度要因及び企業組織要因と密接に関係している点を明らかにした。研究開発のガバナンスを考慮する上で重要であると考えられる。また、海外への進出については、その産業構造の要因が、ローカル企業のみならず第三国企業に波及する点はこれまであまり焦点が当てられておらず、重要な発見であると考えられる。
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