本研究の目的は、国際的な環境保全の枠組みを構築するためには、どのように国際協調して各国で異なる国内の環境政策を調和させればよいかを提示することで、国際的な環境保全に取り組む際に留意すべき点を明らかにすることができる。 本年度(平成20年度)は本研究の最終年度であり、昨年度までに築いた研究の基礎を利用した分析を行った。さらに、収集・整備した資料等を利用して、研究の意義について再度考察した。具体的には、以下のとおりである。 第一に、環境政策などに関連する基本図書の内容を精査した。各国の環境政策の動向や産業構造の特徴を調査するための政府資料も収集した。また、海外の学会などに参加したりして、最新の環境政策と貿易に関する研究動向を調査した。 第二に、国際貿易の一般均衡モデルを構築する上で、環境汚染の生産性への影響か、効用への影響かで、汚染の影響を過小評価する可能性があることに留意したモデルの開発を行った。 第三に、農業部門のような環境汚染から悪影響を受ける部門における補助金政策が、環境政策をゆがめてしまう可能性を指摘する分析を行った。環境政策だけでなく、その他の政策との関連により、環境政策の効果は全く異なる。場合によっては、優れた環境技術の導入が経済厚生を下げるかもしれない。国際的な調和だけでなく、国内政策の調和も不可欠であることが明らかになると予想され、政策的インプリケーションとして大変重要である。
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