本研究では、中国の地域間格差の収束性について、(1)マルコフ連鎖を用いた所得分布アプローチを用いて、中国全体の将来的な所得分布を明らかにする。(2)収集可能な各省別データを用いて、同様のアプローチを適用し、類似点、相違点を明らかにする。(3)さらに可能であれば、マルコフ連鎖を用いたアプローチを応用し、所得以外の格差分析への応用を試みる。以上3つの方向で研究を進めてきた。 まず(1)について、現在、データを2005年まで拡張し、改訂後のデータを使用して再計算した成果(初稿)を完成させた。結果はChina Economic Review誌に掲載されたものを補完するものとなっている。つまり、この研究においても、中国の所得分布は、将来的に豊かな地域(省)と貧しい地域(省)の二極(ツインピーク)に分かれると結論付けている。また、この内容は10月の日本地域学会(九州大学)で報告し、現在『地域学研究』に投稿中である。 次に(2)について、現在、1990年以降の江蘇省と浙江省の市、県レベルのデータを用いて研究を行っている。この2省および上海市を加えた長江デルタの地域内格差について統計分析をしたものを12月の応用地域学会(鳥取大学)で報告し、現在『応用地域学研究』に投稿中である。 (3)について、過去の人口センサスのデータを用いて、地域間の人口移動についてマルコフ連鎖による予測を試みている。人口移動により、過度に人口が集中する省(主に広東省)と減少する省とに分かれることが判明している。5月にPRSCO(バンクーバー)で報告したが、2005年の1%抽出調査が出版されたので、データを再構築して研究中である。
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