研究概要 |
本年度においては, 昨年度から引き続き応用分析を行った。ただし, 本年度は日本及び世界の経済状況が激変し, シミュレーション分析において変更を余儀なくされたため, 以下のような方法で対応した。 まず、原油価格の高騰とその後の急落など物価の変動が生じた。昨年度からの分析では, 物価変動及び金利と財政の関係を見ていたが, 特に物価変動と財政との関係分析を行う必要がでてきた。これらの経済状況への対応を通じて, 物価変動と財政負担の分析を行い, インフレとデフレとで非対称な効果が現れること, インフレでも財政負担が増加することを求めた。 次に, シミュレーション分析において前提とした2011年度のプライマリーバランスの黒字化政策目標が変更された。この点については, 現時点では不透明であり, 今後においても分析を継続していく必要がある。事象研究を通じて, 政策変化を随時確認することで対応した。 最後に, 世界経済との関係である。各国で裁量的な財政政策が行われた。日本でも大規模な経済対策が行われることとなった。例えば, 英国ではゴールデン・ルールとして財政収支等のルールがあったが, これらは一時的に保留状態となった。そこで, 一つは, 英国の財政について分析し、経済状況と財政ルールの関係をみた。もう一つは, そもそも経済状況が悪化すれば, 歳入が減少し, 歳出を一定としても財政収支は悪化する。そのため, 政策ルールでは、単年度のみではなく中長期的な視点もルールに組み入れる必要があることを見た。
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