平成19年度は、(1)家計経済研究所および慶応大学が作成した二種類の家計パネルデータを用い、家計消費と資産と労働供給に関する動学分析、(2)全国消費実態調査と慶応家計パネルを用いた、家計消費データに含まれる測定誤差の検証、(3)日経POSデータを用いた、スーパーの特売時の消費および価格の変化、の三種類の研究を行った。(1)は標準的な予備的貯蓄モデルに労働供給決定と家計構成の変化を導入したものであり、通常知られている消費・年齢プロファイルの山形、および右下がりの労働供給プロファイルをモデルで再現し、実際にデータと合致させることを目的としている。(2)と(3)は、家計消費パネルデータの変動が非常に大きいという、消費平滑化に反する事実が何に起因しているのかを解明するための予備的考察である。消費データの変動はオイラー方程式の推計等において最も重要な情報であり、データの収集方法に起因する変動要因を正確に理解することは、消費データを用いた分析を行う上で極めて重要なことである。実際の家計消費が通常のモデルに従い平滑化されているにも関わらず、実際の消費パネルデータが不安定になっていると仮定した場合、そのような乖離が生じる理由として、消費データに含まれる計測誤差および特売時の買いだめ等に起因する支出と消費のタイミングのずれの二っの要因を考えることができる。家計簿ベースと記憶べースの消費データの比較からは、測定誤差が主要因であると考え'ることは困難であるという結果を得た。一方、スーパーマーケットの特売時の販売量は非常に多く、家消費支出には買いだめなどによる一時的要因が多く存在する可能性があることがわかった。
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