平成20年度は、(1)家計経済研究所、日経スキャンパネル、郵政研データを用いた、所得変動の恒常的要因と学歴との関係、(2)日経スキャンパネルに基づく家計消費支出変動と集計期間の関係、(3)イギリスのマーケティングデータに基づく家計消費関数の推計を行った。(1)は、家計消費行動に多大な影響を与える所得の恒常的変動が、近年増加傾向にあるか否かを家計経済研究所のデータに基づき、共分散構造から推計したものである。分析の結果、大卒家計では2002年までの所得変動の要因に大きな変化は観察されないが、高卒家計では恒常的所得変動の増加が観察された。また、他のデータに基づき、学歴と所得分散の関係をみると、高卒家計の所得分散が、大卒家計と比較して近年増加傾向にあることが確認された。(2)は、前年度までの分析で明らかになった家計消費データの過大な変動の要因を探る試みであり、日次で記録されている日経スキャンパネルを用い、加工食料品支出変化率の分散およびその共分散構造がランダムウォークに近くなる集計期間がどの程度の長さになるかを分析したものであり、その結果、通常のパネルデータで採用されている月次では集計期間が短すぎ、四半期程度の長さが必要であることが明らかとなった。(3)のイギリスのマーケティングデータを用いた分析は、(2)の成果を踏まえ、より詳細な情報を持つ日次データを用い、特売などの一時的な価格変動の不確実性を導入した消費関数の推計を試みている。この成果は、University College Londonの研究者達との共同研究として現在まとめる作業を行っている段階である。
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