本研究は、日本の輸出企業の価格設定(インボイス通貨選択)行動を詳細な輸出品目のレベルで分析する実証研究である。本研究の特徴は、(1)特に対東アジア輸出に焦点を当てながら、為替レートのパススルー率で計測される日本企業のインボイス通貨選択行動を、品目別・輸出相手国別に分析している点にある。HS9桁分類の日本の貿易統計を用いて、先行研究よりはるかに多い数十品目のデータを基に日本の主要輸出相手国(35カ国)別にパススルー率を推計している。また、(2)日本銀行が公表する輸出価格指数データを基に、日本の輸出入のインボイス通貨選択行動を詳細な品目レベルで推計する手法を開発した。この新しい分析手法によって、品目別のインボイス通貨比率を時系列で分析することが可能となった。先行研究では明らかにされなかったインボイス通貨選択の実態を詳細な品目レベルで解明している点が、本研究の貢献である。 すでに上記(1)の研究成果は平成19年12月にニュージーランドで開催された国際学会、Modelling and Simulation Society of Australia and New Zealand(MODSIM07)で発表し、同学会の査読付きProceedingsに掲載されている。平成20年度は上記(2)の研究を進め、平成20年度末の時点で実証分析をほぼ完了した。現在、Working Paperを作成中である。Working Paperが完成次第、国内外の学会に投稿し、論文発表の機会を得る計画である。また、学会発表を通じて論文をさらに改訂し、最終的には海外の英文査読付き学術雑誌に投稿することを目指す。
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