研究概要 |
平成18年度は,倒産や産業再生に関わる現行の日本の法制度や近年の倒産・企業再生の事例を検討し,それらを反映した基本的なマクロ動学モデルの構築と若干の分析を中心におこなった.基本的なモデルの枠組みとして,イノヴェーションによって中間投入財の品質が改善する(Quality-ladder)タイプの内生的成長モデルを採用し,それに企業倒産および関連する法制度の要素を組みいれた.企業倒産と倒産法制をモデルに組み込むにあたっては以下のように考えた.まず,企業家が債権者から資金を調達し,イノヴェーションを行うことをもって企業の設立と捉える.イノヴェーションの成果(中間財の品質向上の度合い)は確率的であり,またそれを事業化(中間財の生産を実行)するには,追加的なコストが必要となる.成果が小さすぎる場合には,イノヴェーションが行われても事業化されずに廃棄される場合が出てくる.このイノヴェーションの成果が廃棄される(モデル上は他の経済主体が引き継ぐ)ことを企業の倒産と捉える.そして企業倒産にかかわる費用の高低(具体的には中間財清算を他の経済主体が引き継ぐ場合の効率性のロスの大小)で法制度のありようをあらわすことにした.以上のような内生的成長モデルを構築し,均衡条件の導出まで作業を進めた.あらかじめ予想されたことであるが,モデルが複雑となったため,現時点では均衡成長経路を解析的手段によって導出するにはいたっていない.来年度は数値演算ソフトウェアを用いて,コンピュータシミュレーションを行う予定である.
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