研究概要 |
第二年度にあたる平成19年度は,二つの視点から研究を遂行した。 一つは,昨年度からの継続で,地域産業政策の全国動向についてアンケート調査をもとに分析した。地域産業政策は自治体が主導しつつ,施策の「選択と集中」が求められるなかで,全国的な潮流を押さえておく必要がある。こうした問題意識から,「選択と集中」で模索する自治体が,今後,産業振興を進めていく上で,どのような工夫が必要なのかを考えるために,初年度はアンケート調査を行い,データ収集に努めた。本科研費を活用し,2006年6月に「自治体産業振興に関するアンケート調査」を実施した。全国849自治体(47都道府県,東京23区,15政令指定都市,764市全部)を対象とした。市町村合併が一段落した後のこの時期を対象とし。政策の制定状況や予算や担当課人員の推移,産業振興の柱や問題点,起業件数などについて調査を実施した。回収件数が425件,回収率は50.1%を越えた。いくつかの知見が得られ,地方分権改革や中小企業政策の役割変化の中で,ビジョンや条例制定などが相次いでいるが,自治体がイニシアティブを発揮した産業振興の例はまだそう多くないこと,産業振興の成果が表れている自治体の特徴としては,「選択と集中」で支援領域を絞りつつあること等を明らかにした。分析結果をもとに論文を執筆し,『日本中小企業学会論集』に「地域産業振興のための政策分析・地域比較」として掲載された。 もう一つは,実際に,島根県を対象に,産業振興のあり方について実態調査を行った。中山間地域で占められる島根県は,高齢化・人口減少が全国一であり,産業振興が急務の課題となっている。中山間地域の取り組みは,まだ緒についたばかりではあるが,中山間地域ならではの行政の取り組み,民間の取り組みが観察される。これらの状況を,関満博編『地方圏の産業振興と中山間地域』にまとめた。今後,継続して,中山間地域の産業振興を追っていくつもりである。
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